ミックスダウンの音素材として気を付けるポイント(ドラム編)
ここ数年で宅録機材が高音質でありながらリーズナブルであるので宅録でレコーディングを行なって、レコーディングスタジオにミックスダウンのみを依頼される方が増えている傾向があります。
今回はレコーディングスタジオにミックスダウンを依頼する際にエンジニアがミックスしやすい素材に仕上げるポイントをご紹介したいと思います。
全てを一度に纏めると長くなりますので今回はドラム素材のティップとなります。
打ち込みドラムの気を付けるポイント
まず多くの方が宅録環境で作成出来るドラムデータとしてドラム音源の打ち込みデータとなります。
打ち込みドラムは音決め、ベロシティー、タイミングなど決める要素が多いので奥が深く、説明し始めると長くなりますので必要最低限気を付けるポイントは下記となります。
まず1点目はベロシティー設定です。
打ち込みのMIDIデータにはベロシティー(強弱)の設定が行えます。
数年前のドラム音源はベロシティーの強弱で音の大きさのみに変化を加えてベロシティーを表現していましたが、最近のドラム音源はベロシティーによって楽器の鳴りも変えています。
例えばスネアであればベロシティーが高いポイントでは胴鳴りは勿論、スネアサイドのスナッピーまでしっかり鳴っているサウンド、ベロシティーが低いポイントでは胴鳴りも少なくスネアサイドのスナッピーが鳴っていないサウンドで出力されます。(音被りなどもベロシティーに依存します)
ロックバンドのドラムサウンドの場合はベロシティーが高い設定の方が他ソースとの混じりも良いです。
ドラム音源にもよりますが皮モノ系は110以上のベロシティーを設定すると各パート鳴りが良いサウンドで出力される傾向があり、逆に金物系はあまり大きなベロシティーを設定すると音割れやぶっ叩いてるようなサウンドになる調整が必要です。
ミックスダウンで強いアタックを弱くする事は出来ますが、弱いアタックを強くする事は難しいです。(EQで演出する事も出来ますが不自然な仕上がりになります)
またドラム音源で生ドラムのようなニュアンスを求める場合はドラム音源に付属しているMIDIデータを使用するとニュアンスが出たフレーズで出力出来ます。
弊社エンジニアも打ち込みドラムを作成する場合も、まずサンプルMIDIをベースに作る事が多く、ゼロベースで作成することはあまりありません。
その為に多方面のジャンルに対応出来るように大量のサンプルのMIDIを用意しております。
2点目はドラム音源の出力方法ですが、限りなく別々のパラデータとして書き出してください、
別々のパラデータとして書き出す事でミックスの際に細かい部分までコントロール出来ます。
例えばスネアであれば、トップとボトムを分けたり、タムが複数ある場合は各タム単位で書き出して頂けると嬉しいです。
たまにスネアのトップとボトムが同じトラックに書き込まれていたり、複数タムの全てが1つのステレオデータに纏まっていたり、その場合は各パーツへ細かいEQやコンプレッションなどの処理が行えないです。
キックもインとアウトに分けたり、ハイハットやライドもトップマイクとは分けて出力する事をオススメします。
3点目はトップマイクやルームマイクなどのドラムセット全体を収録しているトラックは基本的にはデフォルト設定でOKです。
ドラム音源でお好みの音作りをする場合は、プリセットをベースとしてカスタマイズする方が多いと思いますが、プリセット段階である程度トップマイクやルームマイクは調整されているので、変更しなくても問題ないです。
細かく設定が行えるドラム音源もありますが、トップマイクやルームマイクの設定は非常に難しい部分ですので、ドラムレコーディング経験者でない限りは変更する必要はないです。
4点目は音被りのカットです。
キックを鳴らした時にスネアのスナッピーがなったり、音の被りまで忠実に再現するドラム音源もありますが、ミックスダウンでは単体パーツの被りは不要なので設定で被りはカットして頂きたいです。
5点目はジャンルに沿ったドラム専用音源を使用する事です。
DAWの付属のドラム音源でも問題ないですが、ロックドラム音源のオススメはSteven Slate Audio / SSD5やTOONTRACK / SUPERIOR DRUMMERです
どちらもロック向きなサウンドを得意としていますが、ポップスなどもしっかりカバー出来るのでレコーディングで使用される方が多いです。
テクノなどの打ち込みサウンドにはNative Instruments | Battery 4です。
AKAI MPCを彷彿とさせるUIで各種打ち込み用コントローラーとの親和性も高いのでステップ入力もやりやすいです。1つ1つの音に存在感があるのでミックスする際も他ソースに埋もれる事がないしっかりしたサウンドが特徴です。
アコースティックドラム(生ドラム)の気を付けるポイント
アコースティックドラムのレコーディングをリハーサルスタジオなどで行い、そのデータをミックスダウンの素材としてエンジニアに送付される方も稀にいらっしゃいます。
アコースティックドラムのレコーディングで注意するポイントは下記となります。
1点目は16トラック以上同時にレコーディング出来るシステムです。
エントリークラスのインターフェイスの場合は多くても最大同時入力8トラックまでが殆どで、最大同時入力8トラックではドラムレコーディングにはトラック数が足らず、16トラック以上は必要不可欠です。
(8トラックでもドラムレコーディングは出来ますが、かなりローファイサウンドになり現代のようなハイファイなサウンドには仕上げられないです)
逆にプリプロなどは8トラックで収録するとプレイの荒が見えやすいのでオススメです。
ドラムレコーディングに最適なインターフェイスはRME / Fireface 802、 UNIVERSAL AUDIO / APOLLO X16などがオススメです。
2点目はドラム機材(シンバルやスタンドも含めて)は全て持ち込む事をオススメします。
リハーサルスタジオのドラムセットはリハーサル用として使用されているのでヘッドやシンバルと言った消耗部品の状態、見えない部分のメンテナンスなどレコーディング用には不向きです。
貴重なレコーディング時間で常設ドラムセットのヘッド交換や各種メンテナンスを行うのは勿体なく、ドラムセットを持ち込む事でヘッド交換、シンバルの状態などもご自身で把握出来るので良い状態でレコーディング出来ます。
正直なお話、アコースティックドラムを始めとする複数本のマイクで同時に収録するマルチレコーディングは、ある程度の経験者でないと位相や全体バランスを捉え方などが調整出来ないので、レコーディングエンジニア以外はオススメ出来ないです。
また常設ドラムセットの状態、使用するマイクやアウトボードやケーブル、ルームコントロール調整などを始めとする部分でレコーディングスタジオ以外でのドラムレコーディングはリスクが多い傾向がします。
まとめ
今回はレコーディングスタジオにミックスダウンを依頼する際にクオリティーが上がるポイントをご紹介させて頂きました。
ご自身でミックスダウンされる方にも上記の事は当てはまりますので、参考にして頂ければと思います。
ドラムの打ち込みが得意ではない方、生ドラムでレコーディングしたい方など、各種レコーディングに関してしっかりサポートさせて頂きますので、お気軽にご連絡頂ければと思います。
皆さまからのご連絡をお待ちしております。